三叉神経痛の治療法について詳しく解説

三叉神経痛の治療法について詳しく解説

三叉神経痛の治療法について詳しく解説

突然、顔に電気が走るような強い痛みが起こり、日常生活に支障をきたすこともある三叉神経痛。「歯を磨くと痛む」「風に当たるだけでつらい」など、わずかな刺激でも痛みが生じるため、不安を抱える方は少なくありません。ただし、三叉神経痛にはいくつかの治療法があり、症状の背景や生活状況に応じて選択肢を検討することができます。

今回の記事では、三叉神経痛とはどのような病気か、その痛みの特徴や原因による分類、診断の流れについて解説するとともに、薬物療法・神経ブロック療法・外科的治療など、三叉神経痛の治療法について紹介していきます。ご自身やご家族にとって納得のいく治療法を検討する際の手がかりとしてお役立てください。

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三叉神経痛とは

三叉神経痛とは

三叉神経痛の治療法を理解するためには、この病気ではどのような仕組みで痛みが生じるのかを知っておくことも大切です。

はじめに、三叉神経痛の特徴や痛みが起こるメカニズム、発症しやすい年代について解説していきます。

三叉神経痛とは

三叉神経痛は、顔の感覚(痛覚・触覚・温度覚)や咀嚼する運動をつかさどる三叉神経が刺激されることで、突然の強い痛みが生じる病気です。

多くの場合、三叉神経痛の症状は顔の片側だけに短い痛みの発作を何度も繰り返すことが特徴です。原因の背景には、三叉神経の近くを走る血管との関係や、ほかの病気にともなう神経の障害などがあり、おもに原発性・二次性・特発性に分けられます。

三叉神経痛は神経障害性疼痛のひとつに分類され、適切な治療法を選ぶためには、痛みの起こり方や原因となっている病態をていねいに評価することが大切です。

三叉神経痛で痛みが起こる仕組み

三叉神経痛の多くは、脳の深部で三叉神経と近くを走る血管が接触し、神経が圧迫されることが引き金になっていると考えられています。血管が拍動するたびに神経の一部に機械的な刺激が加わり、その部位が傷つきやすくなることで痛みを伝える神経の線維が過敏な状態になります。その結果、本来であれば痛みとして感じない程度の刺激でも、強い痛みの信号が急激に発生し、発作的な痛みとして自覚されます。

三叉神経痛を発症しやすい年齢と性別

三叉神経痛は40〜60代で発症しやすく、男性より女性にやや多い傾向があります。加齢により血管の位置や形状が変わり、神経と接触しやすくなることが発症に影響していると考えられています。一方、若年齢で三叉神経痛を発症した場合には、腫瘍や多発性硬化症など二次性の原因が背景にある可能性があるため、慎重に検査をおこなうことが重要です。

三叉神経痛の症状

三叉神経痛の症状

ここからは、三叉神経痛に典型的とされる痛みのあらわれ方と、症状が日常生活に及ぼす影響について解説していきます。これらの内容を理解しておくことは、三叉神経痛の早期発見だけではなく、今後の治療法を医師と相談するうえでも役立つでしょう。

三叉神経痛の典型的な痛みの特徴

三叉神経痛の痛みは、電気が走るように鋭く、数秒から長くても数十秒ほどで治まる短い発作としてあらわれます。痛みは顔の片側に限局し、頬や上あご・下あご・歯ぐきなど、三叉神経の支配領域に沿って生じます。予兆なく突然発生することが多く、患者さんが思わず動作を止めてしまうほどの強さで、発作は何度も繰り返されることが大きな特徴です。

三叉神経痛の痛みの誘発要因

三叉神経痛では、触れた程度のわずかな刺激でも痛みが誘発されることがあります。たとえば、洗顔、歯みがき、食事、会話、冷たい風に顔が触れるといった日常的動作がきっかけになるケースがよくみられます。これらは、通常であれば痛みをともなわないごく軽い刺激ですが、神経が過敏になっていることで瞬間的な電撃痛として伝わります。

日常生活への影響

三叉神経痛の痛みは突然に起こり得るため、食事や洗顔、髭剃りなどの生活行動を控えざるを得なくなることがあります。発作への恐怖から外出をためらうなど心理的な負担にもつながり、症状が続くと日常生活の質や睡眠、仕事にまで影響が及ぶことがあります。

三叉神経痛の原因による分類

三叉神経痛の原因による分類

三叉神経痛は、その原因によっておもに3つのタイプに分類されます。どのタイプに該当するかによって治療法の選択肢が変わるため、原因の違いを理解しておくことが大切です。

ここでは、「原発性」「二次性」「特発性」の3つについて解説していきます。

原発性の三叉神経痛

原発性では、ほかに痛みの明らかな原因となる病気はなく、血管が三叉神経を圧迫したり触れたりすることで痛みが引き起こされます。また、血管の拍動が続くことで神経が刺激されやすくなり、軽い刺激でも強い痛みが生じやすい傾向があり、三叉神経痛のなかでもっとも多いとタイプとされています。治療法としては薬物療法や微小血管減圧術など、いくつかの治療法が選択肢となります。

二次性の三叉神経痛

血管の奇形、腫瘍、自己免疫疾患など、別の病気や異常が原因で三叉神経が刺激されているケースは、二次性の三叉神経痛であると診断されます。特に、若年で発症した場合や両側性の痛みがみられる場合には、この二次性を疑う必要があります。治療では原因疾患への対応が優先されるため、三叉神経痛の原因となっている病気を特定するための画像検査がおこなわれます。

特発性の三叉神経痛

特発性とは、検査をおこなっても原因が特定できず、明確な背景の病気や病態が確認されない状態を指します。症状は原発性と似ていることが多く、治療法としては薬物療法を中心に、症状に応じてほかの治療法も検討されます。原因が明らかにならなくても、症状の評価と治療の反応性を見ながら適切にコントロールしていくことが重要です。

三叉神経痛の診断

三叉神経痛の診断

三叉神経痛は痛みのあらわれ方が特徴的ではありますが、適切な治療法を選択するためには顔面痛をともなうほかの病気としっかりと区別する必要があります。診察では、痛みの性質や発生状況を確認しながら、三叉神経に関連する異常がないかを調べていきます。こうした診断の情報が、その後の治療法の選択や組み立て方の基盤になります。

ここでは、三叉神経痛がどのように診断されるのかをみていきます。

問診と神経学的診察

三叉神経痛の診断の第一歩は、痛みのあらわれ方を詳しく把握することです。どのくらいの時間続くのか、どのような動作で痛みが誘発されるのかなど症状の特徴を確認し、顔の感覚異常や麻痺の有無、痛みがどの領域に強いかといった神経学的な診察をおこないます。これらの情報が、三叉神経痛かどうか、また二次性の病気が隠れていないかの判断に役立ちます。

画像検査

三叉神経と血管の位置関係やほかの病気の有無を調べるために、MRIを中心とした画像検査がおこなわれます。特に、三叉神経の根元付近を詳しく映しだす撮影方法を用いることで、神経に血管が触れていないか、病変がないかを判断します。画像上の異常を細かく確認することで、原発性・二次性の判別がしやすくなり、適切な治療法の選択にもつながります。

三叉神経痛の治療法

三叉神経痛の治療法

三叉神経痛の治療法は、薬を使った治療法(薬物療法)、痛みを抑えるための注射による治療法(神経ブロック療法)、血管と神経の接触を改善する外科的な治療法の3つに分けられます。どの方法を優先するかは、症状の強さや痛みのあらわれ方、画像検査で確認される原因の違いによって変わってきます。

ここでは、三叉神経痛で一般的に選択される治療法と、その特徴について詳しく解説していきます。

三叉神経痛の薬物療法

薬物療法は、三叉神経痛の治療法のなかで最初に検討される方法です。

過敏になっている三叉神経の働きを落ち着かせることを目的として、神経の興奮を抑える薬剤が用いられます。なかでも「カルバマゼピン」は三叉神経痛に対する代表的な薬剤で、最優先で処方される薬です。カルバマゼピンは、痛みの信号を伝える神経の活動を抑えることで発作の頻度や強さを軽減します。

三叉神経痛の薬物療法では、患者さんごとに適切な量が異なるため、少量から開始して痛みの状態や副作用を確認しながら段階的に用量を調整していきます。また、副作用として眠気やふらつき、肝機能の異常などがあらわれることがあり、特に治療開始からしばらくのあいだは定期的な血液検査や診察が必要になります。十分な改善が得られない場合やかったり、副作用が強く続いたりする場合には、ほかの抗てんかん薬や神経障害性疼痛の治療薬への切り替えや、神経ブロックや外科的治療など、ほかの治療法との組み合わせなどを検討していきます。

三叉神経痛の神経ブロック療法

神経ブロック療法は、痛みの伝達を担う三叉神経の周囲に局所麻酔薬などを注射し、痛みの刺激が脳へ届きにくい状態をつくる治療法です。薬物療法だけでは十分に痛みが抑えられない場合や、日常生活に支障が出るほど痛みが強いときに検討されます。効果が実感できる期間には個人差がありますが、一定の期間痛みが軽くなることで普段の生活を送りやすくなるというメリットがあります。

三叉神経には複数の枝があり、どの枝が痛みに関わっているかによって注射をする部位が異なります。診察や症状をていねいに確認したうえで、最適な部位を選んでブロックをおこないます。外科的な手術に比べて体への負担が少なく、薬の副作用が気になる方でも受けやすい治療法です。ただし、神経そのものの過敏性を根本的に改善するものではないため、しばらくすると痛みが戻る場合があり、症状の経過によってはほかの治療法を併用することもあります。

外科的な治療法

三叉神経痛のうち、三叉神経の根元付近への血管による圧迫が原因と考えられるタイプに対しては、原因そのものに働きかける治療法として外科的治療がおこなわれます。

代表的な方法が「微小血管減圧術」という手術です。三叉神経に触れている血管を慎重に離し、血管を移動させる(transposition)ことで圧迫を取り除き、神経への刺激を減らします。原発性の三叉神経痛に対しては、原因除去を目的とした唯一の根治的な治療法と位置づけられており、薬物療法で痛みが十分に抑えられない場合だけではなく、副作用やアレルギーのために薬剤が使いにくい方でも、全身麻酔に耐えられる体力があれば選択肢として検討されます。ただし、手術後の体力回復や、顔面のしびれ、聴力低下、髄液漏、感染症などの合併症に注意が必要です。

こうした負担やリスクを考慮し、開頭手術が難しい方や希望されない方には、三叉神経の一部を選択的に傷つけて痛みの伝わりを弱める「経皮的手術」が選択されることもあります。具体的には、高周波熱凝固法、グリセロールによる神経節ブロック、バルーン圧迫法などがあり、痛みを抑えることができる一方、いずれも顔の一部にしびれが残る可能性を考慮する必要があります。また、放射線を用いて痛みの経路を調整する「ガンマナイフ治療」がおこなわれることもあります。

これらの方法は、痛みの抑え方や効果の持続期間、再発のしやすさ、顔面の感覚障害といった点で特徴が異なるため、年齢や体力、仕事や生活スタイルを踏まえ、医師と十分に相談しながら自分に合った治療法を選び、必要に応じて治療法を組み合わせていくことが重要です。

三叉神経痛の治療法の選択基準

どの治療法を選ぶかは、痛みの強さ、発作の頻度、生活への影響、画像検査で確認された原因の有無などを総合的に検討して判断されます。まずは薬物療法をおこない、十分な効果が得られない場合には神経ブロックや外科治療との併用を検討します。また、副作用のでやすさ、持病との関係、仕事や生活スタイルなども重要な判断材料となります。

特に、血管による神経の圧迫が明確な場合は、微小血管減圧術が根治的な治療法となることがあります。一方で、高齢の方や手術に不安がある方では、神経ブロックやガンマナイフといった負担の少ない治療法を優先することもあります。三叉神経痛の治療では、ひとつの方法だけではなく、複数の治療法を組み合わせながら痛みのコントロールと日常生活の改善を目指していきます。

治療後の経過と再発予防

治療後の経過と再発予防

三叉神経痛は、治療によって痛みが大きく改善することが期待できますが、治療法によって経過は少しずつ異なります。ここでは、一般的な治療後の経過と、症状の再発や悪化を防ぐためのポイントについて紹介していきます。

治療後の経過

薬物療法は、続けることで痛みが落ち着いた状態を保ちやすくなりますが、体調の変化などで再び痛みが強くなることもあります。また、神経ブロック療法を受けた場合は、治療直後から痛みが和らぎ、その効果がしばらく続いたあとに徐々に元の症状に戻ることがあります。

微小血管減圧術などの外科的治療をおこなった場合は、痛みが長期間ほとんどあらわれなくなる方も多い一方で、しびれ感や軽い痛みが残ったり、時間の経過とともに再び痛みが生じるようになったりすることがあります。それぞれの治療法で気をつける点は異なりますが、いずれの治療法でも症状の変化や気になることがあれば、早めに医師に相談することが大切です。

再発・悪化を防ぐためにできること

三叉神経痛は、生活習慣を見直すだけで改善できる病気ではありませんが、口腔ケアに気をつけ、いつも清潔に保つことも予防法の一つです。また痛みがでやすい状況を避けることで症状の悪化を抑えられることがあります。洗顔や歯みがきなど日常の刺激が痛みのきっかけになり得ますので、自分の痛みの引き金になりやすい動作や環境を把握して行動の工夫をすることが大切です。また、症状がいつもと違うと感じたときには早めに受診することも重要です。

まとめ

三叉神経痛は薬物療法、神経ブロック療法、微小血管減圧術などがある

三叉神経痛の治療法には、神経の興奮を抑える薬物療法、痛みの伝達を一時的に遮断する神経ブロック療法、原因となる血管の圧迫に対して直接アプローチする微小血管減圧術をはじめとして外科的治療など、いくつかの選択肢があります。適切な治療法を選ぶためには、納得できるまで医師と相談することが大切です。また、症状に変化を感じたときは我慢せず、早めに医療機関を受診しましょう。

「会って話せる医療相談」では、これまでに三叉神経痛の治療を数多く手がけてきた経験豊富な医師が診察を担当しております。紹介状(診療情報提供書)がない方でも受診していただけますので、三叉神経痛の治療法の選択にお悩みの方やそのご家族の方は、どうぞお気軽にお問い合わせください。

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昭和医科大学医学部 脳神経外科教授 / 三叉神経痛・顔面痙攣総合センター センター長の清水 克悦(しみず かつよし) 先生の写真

【コラム監修者】

清水 克悦(しみず かつよし) 先生

昭和医科大学医学部 脳神経外科教授 /
三叉神経痛・顔面痙攣総合センター センター長

良性腫瘍(髄膜腫、下垂体腺腫、聴神経腫瘍など)や頭蓋底腫瘍の手術治療を中心に、顔面けいれん・三叉神経痛に対する根治術である微小血管減圧術を得意とする。鍵穴手術や頭蓋底手術手技を駆使し、脳幹部という高度な技術を要する領域にも対応。脳腫瘍治療においても、頭蓋底外科の技術を駆使した安全性の高い手術を行っている。

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