
副鼻腔炎の代表的な症状として鼻づまり、鼻水や頭の重だるさが挙げられますが、風邪に似ていることから見過ごされやすく、悪化して日常生活に大きな支障がでてしまうことがあります。そのような副鼻腔炎を早期に発見して悪化を防ぐためには、正しい原因を知り、適切な治し方を実践することが大切です。
この記事では、副鼻腔炎の原因、治し方、注意点などについてわかりやすく解説していきます。「長引く鼻の不調を何とかしたい」「治し方を知って早く楽になりたい」という方は、ぜひこの記事を参考に適切な対処をおこなってください。
目次
副鼻腔炎とは

副鼻腔炎は、風邪やアレルギー・細菌感染などによって鼻の奥にある副鼻腔に炎症が起こり、粘り気のある鼻水や鼻づまり・頭痛などを引き起こす病気です。症状の程度や経過には個人差がありますが、適切な治し方によって改善が期待できます。
副鼻腔の構造
鼻(鼻腔)の奥には、「上顎洞」「篩骨洞」「前頭洞」「蝶形骨洞」と呼ばれる空洞があり、これらを総称して「副鼻腔」といいます。通常、副鼻腔は空気で満たされており、鼻腔と小さな通路(自然口)でつながっています。この通路を通して換気や分泌液の排出がおこなわれ、鼻の正常な状態が保たれているのです。副鼻腔の機能はそれ以外に、空洞なので頭を軽くする、脳や目を外的衝撃から緩衝する役割、声の共鳴などもあります。
副鼻腔炎が発生するメカニズム
副鼻腔炎は以下のプロセスを経て発症します。
まず、風邪のウイルスや花粉などの刺激によって鼻腔・副鼻腔の粘膜が炎症を起こし腫れ上がります。その腫れにより自然口が閉塞し、副鼻腔内の換気ができなくなることで粘液や水分が副鼻腔に溜まるわけです。
この状態が続くと、溜まった粘液が細菌やウイルスの繁殖環境となります。粘液は膿へと変化し、黄色や緑色の鼻水・頭痛などの症状があらわれるのが特徴的です。
発症から1か月未満のケースは「急性副鼻腔炎」、おおよそ3か月以上続く場合や再発を繰り返す場合は「慢性副鼻腔炎」と分類され、治療法も異なります。ちなみに1ヶ月から3か月までは「亜急性副鼻腔炎」といいます。
副鼻腔炎の症状

副鼻腔炎は風邪と似た症状から始まることが多いですが、いくつかの特徴的な症状があります。
- 鼻水(黄色や緑色)・後鼻漏
- 喀痰(かくたん)、咳嗽(がいそう)
- 鼻づまり
- 頭痛や顔周りの痛み
- 嗅覚障害
これらの症状が長引く場合は、副鼻腔炎を疑い、耳鼻咽喉科を受診することが重要です。
鼻水・後鼻漏
副鼻腔炎が進行すると、膿が混じった粘り気のある黄色〜緑色の鼻水が増えます。匂いをともなうことも多く、透明な鼻水(アレルギー性鼻炎の症状)とは異なるのが特徴です。
また、鼻水が喉へ流れ落ちる「後鼻漏(こうびろう)」が起こることがあります。後鼻漏が続くとのどに痰がからみ、咳が出やすくなり、気管支炎や咽頭炎へと発展する可能性もあります。
喀痰、咳嗽
副鼻腔炎が進行すると、鼻や副鼻腔内にたまった膿や分泌物が喉へ流れ込み、痰(喀痰)が絡むようになります。その刺激によって咳(咳嗽)が出やすくなり、特に朝起きたときや横になった際に症状が強くなることがあります。
咳や痰が長期間続くと、喉や気管支に負担がかかり、慢性的な咽頭炎や気管支炎を引き起こす可能性もあります。風邪が治った後も咳や痰が続く場合は、副鼻腔炎が背景にあることも少なくありません。
鼻づまり
副鼻腔炎の炎症によって鼻腔や副鼻腔の粘膜が腫れたり、鼻水の量が増えたりすると、空気の通り道が狭くなり息がしづらくなります。それによって口呼吸が増え、喉の乾燥や口臭の原因になります。
特に夜間の鼻づまりは、睡眠の質を低下させ、いびきや睡眠時無呼吸症候群を悪化させる原因です。結果として、日中の集中力低下や頭の重だるさなどの影響がでることも少なくありません。
頭痛や顔周りの痛み
副鼻腔炎によって副鼻腔内に膿がたまると、ほほや目の周囲・額などに圧迫感や痛みがあらわれ、頭痛が起こることもあります。特に、前かがみになったときや頬や額を押した時に痛みが強くなるのが特徴です。痛みは顔面に走っている三叉神経が刺激されることで起こり、頭重感や偏頭痛に似た症状がでる場合もあります。
嗅覚障害
副鼻腔炎により鼻の通りが悪くなると、匂い成分が嗅覚の受容体まで届きにくくなるため、匂いを感じにくくなります。味覚は匂いと密接に関連しているため(風味)、食べ物の味が薄く感じられることもあります。症状が続くとストレスを感じ、生活の質が落ちる原因にもなるため注意が必要です。1年以上匂いがわからないと手術をしても匂いが戻らないことがあるので早めに耳鼻科受診をお勧めします。
副鼻腔炎の原因

副鼻腔炎のおもな原因は、ウイルス感染だけではなく、アレルギー反応・喘息・鼻の構造・免疫力の低下・ストレスなど、さまざまな要因が複雑に関与している場合があります。特に、慢性副鼻腔炎では複数の原因が重なって症状が長期化するケースが多く、再発を防ぐためには原因を理解して適切な対応をすることが重要です。
ここからは、副鼻腔炎の原因について解説していきます。
ウイルス感染
副鼻腔炎でもっとも多い原因は、風邪やインフルエンザなどの上気道炎を引き起こすウイルス感染です。ウイルス感染によって鼻腔粘膜が炎症を起こし、その腫れが副鼻腔につながる自然口を塞ぐことで粘液が副鼻腔から排出されにくくなります。
この状態が続くと、ウイルスが繁殖し急性副鼻腔炎へと進行する場合があります。特に、季節の変わり目や免疫力が低下しているときに発症することが多い傾向にあります。
アレルギー反応
花粉症やハウスダストアレルギーなど、アレルギー性鼻炎が副鼻腔炎の引き金になることがあります。アレルギーによる炎症は急性ではなく持続的であるため、鼻粘膜が慢性的に腫れ、副鼻腔の換気が阻害されやすい状態になります。その結果、慢性副鼻腔炎に移行し、再発を繰り返すケースも多くみられます。特に喘息の方は難治性の『好酸球性副鼻腔炎』を合併していることがあり、注意が必要です。
鼻の構造的な問題
鼻の内部構造が原因で副鼻腔炎が起こりやすくなる場合があります。代表的なものが鼻中隔弯曲症で、鼻の中央にある仕切りが曲がっている状態です。

また、中鼻甲介蜂巣(ちゅうびこうかいほうそう)のように、鼻腔内の組織が膨らんで自然口を圧迫している場合、炎症や感染を誘発する原因となります。これらは薬だけでは改善しないことが多く、必要に応じて手術が選択されることもあります。

そのほかの原因
免疫力低下や炎症を悪化させる生活習慣も副鼻腔炎に関係します。喘息と慢性副鼻腔炎は併発しやすいことが知られており、症状が相互に悪化するケースが多いとされています。
また、過度な疲労やストレスは体の防御機能を弱め、ウイルスや細菌感染のリスクを高めます。また虫歯が原因となり、副鼻腔炎を起こすこともあります。まれに真菌(カビ)が原因となり、難治性の副鼻腔炎を引き起こすこともあります。
副鼻腔炎の治し方

副鼻腔炎の治療は、急性か慢性か、また発症した原因や重症度によって異なります。早期の改善と再発防止のためには、医師の診断に基づく適切な治療が不可欠です。
ここでは、副鼻腔炎の治し方について詳しくみていきます。
薬物療法
急性副鼻腔炎の多くは抗生物質を1週間ほど使用することで改善が見込めますが、炎症が強い場合は消炎鎮痛薬が併用されることもあります。
一方、症状が数か月続く慢性副鼻腔炎では、マクロライド系抗生物質を低用量で2〜3か月投与する治療が一般的です。また、ステロイドの点鼻薬を使用することで粘膜の腫れを抑え、副鼻腔の排泄機能の改善を促す場合もあります。
原因としてアレルギーが関連しているケースでは、抗ヒスタミン薬やロイコトリエン受容体拮抗薬が処方され、アレルギー症状のコントロールをおこないます。治療期間は原因や体質により異なり、再発を繰り返す場合は、予防のために治療を継続することが必要です。
保存療法
副鼻腔炎で薬物療法と併行して用いられる保存療法には、膿や鼻水を吸引する処置やネブライザー治療があります。ネブライザーは薬剤を霧状にして鼻腔に届ける治療で、炎症を効果的に抑えることができます。
また、副鼻腔に直接カテーテルを挿入して洗浄する方法は、慢性的な膿や粘液の除去に有効です。これらの処置は通院で繰り返しおこなうことにより治療効果が高まります。ただこの治療は疼痛や出血を伴うため、最近はあまり行われなくなりました。
手術療法
薬物療法や保存療法をおこなっても副鼻腔炎が改善しない、もしくは鼻中隔弯曲症や鼻茸(ポリープ)の存在によって呼吸や排泄のさまたげになっている場合などは、手術が選択肢になります。
現在、もっとも一般的な方法は「内視鏡下鼻内副鼻腔手術」で、鼻から内視鏡を挿入し、副鼻腔の自然口を広げたり、病変部位を切除したりして換気と排泄機能を改善させる方法です。また、ポリープのみを取り除く「鼻茸切除術」は、内視鏡下鼻内副鼻腔手術と併用されることも多い手術です。

内視鏡下鼻副鼻腔手術風景:内視鏡を鼻内に入れ、テレビ画面で術野を拡大し、副鼻腔の細かな部位を繊細に操作します。さらにCT画像に手術部位をナビゲーションで確認し、脳や目の位置を確認しながら安全に手術を行っています。

手術前後のCT所見:手術前に存在した副鼻腔内の粘膜肥厚が手術後は消失しています。目や頭が近いため、熟練と慎重な操作を要します。
難治性の副鼻腔炎には、「副鼻腔根本術」のようにより広範な病変を切除する手術が必要になることがあります。さらに、鼻中隔弯曲症など構造的な問題が原因の場合は、「鼻中隔矯正術」を併用して鼻の通り道を改善させるケースもあります。
副鼻腔炎の手術をした後は傷口が落ち着くまで1~3か月間くらい、定期的に外来で鼻内の清掃を行います。傷口をきれいにしないと癒着したり、せっかく開放した副鼻腔が閉鎖することがあるからです。
副鼻腔炎の治し方における注意点
副鼻腔炎を改善するためには、治療だけではなく、生活習慣やセルフケアにも注意が必要です。間違ったケアや放置は症状を悪化させ、慢性化を招く原因になることがあります。そのため、治療と同時に日常生活でも意識して対策をとることが重要です。
ここからは、副鼻腔炎を治すにあたり注意すべき点について解説していきます。
自己判断は控える
副鼻腔炎は症状が似ているほかの疾患と区別がつきにくく、鼻水の色や量だけで状態を判断することが困難です。市販薬でしのいで放置すると慢性化し、治療期間が長期化することがあります。症状が1〜2週間以上続く場合や、痛みや嗅覚障害がある場合は早めに耳鼻科で診断を受けましょう。
過労・ストレスを避ける
副鼻腔炎は免疫力が低下すると悪化しやすいため、十分な睡眠と休養が欠かせません。規則正しい生活リズムと栄養バランスの良い食事を心がけることで身体が回復しやすくなります。また、適度な運動やストレスコントロールも予防と改善につながります。
喫煙や過度な飲酒は控える
タバコの煙に含まれる刺激物は、鼻の粘膜を傷つけ副鼻腔炎の炎症を助長させます。また、飲酒は血管を拡張させて粘膜の腫れを悪化させることがあるため、症状の改善をさまたげる可能性があります。特に治療中は控えることが重要です。
鼻をすするのをやめる
鼻水をすする行為は、粘液を副鼻腔内に逆流させて副鼻腔炎の炎症や感染を悪化させる原因になります。こまめにていねいに鼻をかむ習慣をつけましょう。強くかみすぎると刺激となり逆効果であるため、片方ずつ優しくかむことがポイントです。
副鼻腔炎の治し方でよくある質問

副鼻腔炎の治し方で多く寄せられる疑問にお答えしていきます。症状や状況に応じた正しい対処法を知ることで、より早い改善につながるでしょう。
副鼻腔炎を自宅で治す方法(セルフケア)はありますか?
自宅でできる副鼻腔炎の対策として、鼻うがい(生理食塩水による鼻洗浄)があり、鼻腔内の鼻汁やアレルゲン(ほこり、花粉など)、病原体(ウィルス、細菌など)を除去することで症状の緩和に役立ちます。市販薬としては、抗アレルギー薬や去痰薬・ステロイド点鼻薬などが販売されており、症状が軽い場合は補助的に使用することも可能です。さらに、蒸しタオルで鼻周りを温めたりすると血行が促進され、鼻づまりが軽くなることがあります。
副鼻腔炎が治りかけているサインは何ですか?
鼻水の色が透明に近づき、粘度が減ってサラサラしてくるのは副鼻腔炎の改善のサインです。顔周りの痛みや頭重感が軽くなり、徐々に嗅覚が戻り始めることも回復に向かっている証拠になります。また、鼻呼吸がしやすくなり日常生活での不快感が減ってくると、治癒が近いと判断できます。
副鼻腔炎は自然に治りますか?
軽度の急性副鼻腔炎の場合、体の免疫力で自然に治ることもあります。ただし、症状が長引いたり繰り返したりするケースでは、慢性化している可能性があるため医療機関での治療が必要になります。自然治癒を期待する場合でも、症状を悪化させない生活習慣を心がけることが大切です。
副鼻腔炎で出勤停止になることはありますか?
副鼻腔炎自体は出勤停止の対象ではありません。そのため、基本的には仕事も続けることができますが、感染症が原因の場合、症状や会社の規定に応じて休業の判断が必要になることがあります。また、強い倦怠感や頭痛があるときは、無理をせず休養を取ることが望まれます。
まとめ

本記事では、副鼻腔炎の原因や治し方、注意点などについて詳しく解説してきました。
副鼻腔炎は、風邪やアレルギー・細菌感染などがきっかけで副鼻腔に炎症が起こり、鼻水・鼻づまり・頭痛・顔の痛み・嗅覚障害などを引き起こす病気です。風邪と症状が似ているため見過ごされやすく、放置すると慢性化して治りにくくなることがあります。
原因にはウイルス感染だけではなく、花粉症などのアレルギー、鼻中隔弯曲症といった構造的な問題、疲労やストレス・喫煙なども関わります。
治し方は、抗生物質や抗アレルギー薬・ステロイド点鼻薬などによる薬物療法を基本に、必要に応じて吸引・ネブライザーなどの保存療法、内視鏡下鼻内副鼻腔手術などの手術療法を組み合わせておこないます。ただし、副鼻腔の手術は目や脳が近いため、それらを傷つける可能性があり、施設や術者を慎重に選ぶことが重要です。自宅では、正しい方法での鼻うがい、市販薬の上手な活用が症状緩和に役立ちますが、自己判断で長期間続けるのは避けましょう。
鼻水や鼻づまりが長引く、顔が痛む、匂いを感じにくいなどの症状が1ヶ月以上続く場合は副鼻腔炎を疑い、早めに耳鼻咽喉科を受診することが大切です。日頃から十分な睡眠とバランスの良い食事、禁煙・節酒を心がけ、免疫力を保つことも再発予防につながります。
適切な治療とセルフケアを続けることで、つらい症状の改善と健康な日常を取り戻しましょう。
なお、「会って話せる医療相談」では、副鼻腔炎の診断や治療に豊富な経験をもつ医師が診察をおこなっております。治療に関するアドバイスはもちろん、医療機関のご紹介もしておりますので、副鼻腔炎の治し方にお悩みの方はぜひお問い合わせください。

【コラム監修者】
柳 清(やなぎ きよし) 先生
聖路加国際病院 耳鼻咽喉科前部長
東京慈恵会医科大学附属病院、聖路加国際病院などで長年にわたり耳鼻科手術に従事。内視鏡下鼻内手術を中心に多数の症例を経験し、とくに合併症への対応に精通している。高度な技術を要する症例も数多く手がけ、国内外の医療現場で実践的な治療を行ってきた臨床経験豊富な耳鼻咽喉科の名医である。