膵嚢胞の症状とは?原因や治療法についても解説

膵嚢胞の症状とは?原因や治療法についても解説

膵嚢胞の症状とは?原因や治療法についても解説

「膵嚢胞(すいのうほう)」は、膵臓がんや膵炎のように広く知られている疾患ではないため、人間ドックなどで指摘されたときに「がんなのでは?」「どんな症状が出るの?」と不安に感じる方も少なくありません。

膵嚢胞は、ほかの目的で受けた画像検査でたまたま見つかったということも多く、症状がないまま経過するケースもあります。一方で、腹痛や背中の痛みなどの具体的な症状がきっかけとなり、膵嚢胞を診断されることもあります。本記事では、膵嚢胞の基礎知識をはじめに、注意すべき症状、おこなわれる検査、治療法、日常生活で気をつけたいポイントまでわかりやすく解説していきます。

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膵嚢胞とは

膵嚢胞とは

はじめに、膵嚢胞とはどのような疾患なのか解説するとともに、近年罹患者が増えている背景についても紹介していきます。

膵嚢胞の基礎知識

「膵嚢胞」とは、膵臓の内部や表面に液体がたまって袋状になった状態をいいます。膵臓は胃の後ろ側に位置する臓器で、食べ物の消化を助ける消化酵素をつくるほか、インスリンなどの血糖値を調整するホルモンを分泌する役割があります。膵嚢胞は、こうした働きをしている膵臓の中に袋状のスペースができ、そこに液体がたまっている状態を指します。

嚢胞の中にたまる液体は、粘液・膵液などさまざまで、嚢胞がどのような経緯で発生したかによって性質が異なります。そのため、同じ膵嚢胞という疾患名であってもいくつかのタイプに分類されており、医療機関では画像検査などを通じて嚢胞がどのタイプに当てはまるかを慎重に確認していきます。

膵嚢胞のおもな種類

膵嚢胞は、大きく二つのグループに分けられます。

ひとつは、慢性膵炎や急性膵炎のあとにできる「仮性嚢胞」と呼ばれるグループです。膵炎によって膵臓の内部や周囲に膵液がたまって袋状のスペースが形成されたものであり、腫瘍ではありません。嚢胞の大きさや症状の有無によっては自然に小さくなることもあり、経過をみながら治療方針が決定されます。

もうひとつは「腫瘍性膵嚢胞」と呼ばれるグループです。これは腫瘍性の変化にともない嚢胞が形成されるもので、なかには長い経過の間にがんへと近づいていく可能性が指摘されているタイプもあります。そのため、嚢胞の大きさや形、内部に結節があるかどうか、膵管とのつながりなどを確認し、定期的な画像検査によるフォローアップをおこなっていきます。また、状況に応じて外科的手術を検討するケースもあります。

いずれのグループの膵嚢胞であっても、すべてが緊急で治療を要するというわけではありません。タイプと状態をきちんと見極めたうえで、経過観察か治療かを医師と相談しながら決めていくことが大切です。

膵嚢胞が増えている背景

近年膵嚢胞の罹患者数が上昇していることには、膵嚢胞が見つかる機会が増えていることが影響していると思われます。これには、画像診断技術の進歩と普及が大きく関係しています。MRIやCTをはじめとした画像診断、特に膵液の流れや膵管を詳細に確認できるMRCPが広くおこなわれるようになり、これまで把握されていなかった小さな嚢胞も発見されるようになりました。

ただし、膵嚢胞のすべてが病的に進行するわけではありません。嚢胞の種類や形状、内部にしこりがあるかどうか、膵管とのつながりなどを総合的に評価し、定期的な画像検査によるフォローアップをおこなうことで、必要な治療を適切なタイミングで検討していきます。

膵嚢胞の症状

膵嚢胞の症状

膵嚢胞は、健診などの画像検査で偶然見つかり、症状がまったくないまま経過することも少なくありません。しかし、膵嚢胞の大きさや発生している部位、膵炎や感染などの合併症の有無によっては症状があらわれることがあります。

ここからは、膵嚢胞でよくみられる症状のサインと、特に注意したい緊急症状について紹介していきます。

症状があらわれる場合のサイン

膵嚢胞で症状があらわれている場合、その多くは嚢胞が周囲の組織や膵管を圧迫したり、膵液の流れに影響を及ぼしていたりすることが関係しています。

具体的には、みぞおちや背中に重い痛み、または鈍い痛みを感じることがあります。これは、膵臓が背骨に近い深い位置にあるためで、痛みが背中側に響くこともあります。症状は持続的に続くこともあれば、波があるように感じられる場合もあります。

また、膵液が正常に流れなくなると、消化機能にも影響して「食欲低下」「吐き気」「食後のもたれ感」「体重減少」などがあらわれることがあります。さらに、膵管への影響が強い大きい場合は膵炎に近い状態となり、上腹部から背中に抜けるような強い痛みが出ることもあります。

膵臓は胆管とも近い位置にあるため、嚢胞が胆管を圧迫すると胆汁の流れが悪くなり、白目や皮膚が黄色くなる黄疸や、尿の色が濃くなるといった症状が出ることがあります。

これらの症状は、嚢胞の種類や位置、合併症の有無によってあらわれ方が異なります。同じ症状でもほかの消化器疾患が原因であることもあるため、症状だけで膵嚢胞かどうかを判断することはできません。

破裂や感染などの緊急症状

頻度は高くありませんが、膵嚢胞のなかには破裂・感染・出血・膵炎の急激な悪化などが起こる場合があります。これらはより緊急性の高い状態です。

嚢胞の内部に炎症や感染が起こると、発熱をともなう腹痛や吐き気や強い倦怠感が急にあらわれることがあります。また、嚢胞が破裂すると腹腔内に内容物が漏れ出し、冷や汗が出るほどの突然の強い腹痛が生じることがあります。

嚢胞内の出血では、腹痛のほかにも立ちくらみ、動悸、顔色不良などの貧血症状がみられ、膵炎を併発した場合には上腹部から背中にかけての強い痛み、吐き気のほか、嘔吐が急激に悪化するケースが多くみられます。

このような症状がある場合には、膵嚢胞に限らず重い腹部疾患が隠れている可能性があるため、早めの受診、状況によっては救急受診が必要となります。

膵嚢胞の原因

膵嚢胞の原因

膵嚢胞は、発症した原因によって治療の適応や必要性が異なります。

ここからは、膵嚢胞のおもな原因について解説していきます。

急性膵炎・慢性膵炎が原因となる場合

強い炎症が膵臓に起こる急性膵炎や、炎症が長く続く慢性膵炎の発症後、膵臓の中や周囲に膵液がたまって袋状になることがあります。これは、仮性嚢胞と呼ばれ腫瘍ではありませんが、嚢胞が大きい場合や感染などを起こした場合には治療が必要になることがあります。

腫瘍性膵嚢胞(IPMN・MCNなど)

腫瘍の変化にともなって嚢胞が形成されるタイプもあります。代表的なものに、膵管の中に粘液をつくる腫瘍ができて嚢胞化する「膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)」や、膵臓の内部に嚢胞性腫瘍ができる「粘液性嚢胞腫瘍(MCN)」があります。これらのなかには、長い経過のなかでがんに近づいていく可能性が指摘されているタイプもあるため、嚢胞の状態を定期的に確認して必要に応じた治療が検討されます。

先天性・外傷性の膵嚢胞

生まれつき膵臓の形成の過程で嚢胞ができていたり、外傷などをきっかけに嚢胞が形成されたりするもあります。これらは比較的まれなタイプですが、嚢胞の性質や大きさによっては治療が必要になることがあります。

膵嚢胞の検査

膵嚢胞の検査

膵嚢胞は症状がないことも多いため、発見や評価には検査が欠かせません。はじめは比較的負担の少ない検査からおこない、必要に応じてより精密な検査へ進むのが一般的です。

ここでは、膵嚢胞を診断するためにおこなわれる検査について説明していきます。

血液検査で確認できること

血液検査では、膵臓に炎症が起きていないかどうかや、体の中で起きている変化を調べます。値の変化が、膵嚢胞の症状や合併症の有無を判断する材料のひとつになります。ただし、血液検査だけで膵嚢胞の正確な状態が把握できるわけではありません。

超音波・CT・MRI(MRCP)の役割

膵嚢胞の有無や大きさ、形を確認する基本的な検査です。

腹部超音波検査(エコー)

お腹の表面から超音波をあてて膵臓を映し出します。痛みがほとんどなく、はじめにおこなわれることが多い検査です。

CT(コンピュータ断層撮影)検査

体の断面を撮影し、嚢胞の位置や周囲の臓器や器官との関係を詳しく調べます。

MRI/MRCP(磁気共鳴画像・胆管膵管撮影)

磁気を使って体の内部を画像化する検査です。MRCPでは膵管や胆管の流れもわかり、嚢胞との関係を確認するのに役立ちます。これらの検査結果を総合して、症状との関係や今後の経過観察や治療の必要性を判断します。

超音波内視鏡と穿刺検査が必要となる場合

通常の画像検査だけでは判断が難しい場合には、より詳しく状態を確認する目的で超音波内視鏡(EUS)がおこなわれます。内視鏡を胃や十二指腸まで入れ、膵臓の近くから超音波で観察する方法です。さらに判断が必要な場合、EUSの検査中に細い針で嚢胞内に溜まった液体を少量採取する検査(穿刺検査)をおこなうことがあります。これは、その嚢胞がどのタイプなのかを詳しく調べるための検査であり、すべての人におこなわれるものではありません。

膵嚢胞の治療法

膵嚢胞の治療法

膵嚢胞が見つかったとき、このまま様子を見ても大丈夫なのか、症状が出てきたら治療が必要なのか、いきなり手術になることはあるのか、など不安を感じる方もいらっしゃるでしょう。ここからは、膵嚢胞の治療法について解説していきます。

経過観察

嚢胞が小さくて大きな変化がみられず症状のない膵嚢胞では、多くの場合、まず定期的な検査をおこないながら経過を見守ります。MRIやCTなどの画像検査で嚢胞の状態を確認し、形や大きさの変化、膵管との関係、そして新たな症状が出ていないかどうかを継続的に確認していきます。

もちろん、はじめは症状がなくても、経過をみていく過程で腹痛や背部痛、食欲低下、体重減少、黄疸などの症状があらわれた場合には、改めて治療方針を見直すことになります。経過観察というのは、症状がないから放置するという意味ではなく、医師のもとで慎重に病状を管理していくということです。

内視鏡治療(ドレナージ・粘液吸引など)

膵嚢胞が大きくなったことが、痛みや消化器症状、膵炎を繰り返す原因になっていると判断された場合、内視鏡を用いた治療が検討されます。胃カメラに似た内視鏡を使って嚢胞の中の粘液や膵液を排出したり、膵管の流れを整えたりすることで、膵嚢胞による症状の軽減が期待されます。比較的体への負担が少ないことが特徴ですが、膵嚢胞の種類や位置によって向き不向きがあるため、すべての方に適応となるわけではありません。

外科的手術の適応(がん化リスクが高い場合)

腫瘍性膵嚢胞でがん化のリスクが高いと判断された場合や、症状が強く生活に支障が出ている場合には外科的手術による切除が検討されます。嚢胞が大きくなり続けている、形の変化、内部構造の変化が見られる、黄疸や痛みが続くといった症状も、手術を検討するきっかけになります。ただし、年齢や体力、持病の有無なども含めた総合的な判断が必要で、患者さんと医師がよく話し合ったうえで治療方針が決められます。手術は必ずおこなうものではなく、リスクを考慮しても利益のほうが大きいと判断された場合に選択される治療です。

日常生活で気をつけたいこと

日常生活で気をつけたいこと

膵嚢胞がみつかったとしても、日常生活を見直すことで膵臓への負担を減らし、症状の悪化や合併症を防ぐことができるかもしれません。

最後に、膵嚢胞を発症した方に気をつけていただきたいポイントについて紹介していきます。

急性膵炎を防ぐ生活上のポイント

膵嚢胞のなかには、膵炎と関係しているタイプがあります。アルコールの飲み過ぎや脂っこい食事は膵臓に負担がかかり、腹痛などの症状を招くきっかけになることがあります。飲酒量を控え、できるだけバランスのよい食事を心がけることが大切です。特に膵炎の既往歴のある方は、少しずつでも生活習慣を変えていきましょう。

血糖値の変動に注意すべき理由

膵臓は血糖値を調整するホルモンもつくっています。そのため、膵嚢胞の種類や発生した部位によっては血糖値が不安定になり、だるさや口渇などの症状が出ることがあります。急な体重減少やのどの強い渇きなど、気になる症状が続く場合には早めに相談すると安心です。

定期フォローアップ(画像検査)の重要性

症状がない膵嚢胞でも、定期的な画像検査で変化がないかを確認することが勧められています。大きさや形に変化がないか、膵管との関係に変化がないか、そして新しい症状が出ていないかを継続的に確認していくことが安心して日常生活を送るためのポイントです。自己判断で通院を中断せず、主治医と相談しながらフォローしていくことが大切です。

まとめ

膵嚢胞とはどのような疾患か、その症状や原因、治療法について解説

今回の記事では、膵嚢胞とはどのような疾患か、その症状や原因、治療法について詳しく解説してきました。

膵嚢胞には、特に目立った症状もなく、経過観察だけでも問題ないというケースも多いのは事実です。しかし、腹痛や背部痛、体重減少、黄疸などの症状がある膵嚢胞では、内視鏡治療や手術を含めた積極的な治療が検討されます。膵嚢胞の大きさや形だけで判断せず、症状の変化をていねいに確認しながら、定期検査で膵嚢胞の状態をフォローしていくことが重要となります。気になる症状がある場合は、自己判断で様子をみるのではなく主治医に相談するようにしましょう。

「会って話せる医療相談」では、膵嚢胞をはじめとした膵臓疾患の臨床経験が豊富な医師が診察を担当しております。紹介状や検査結果などをご持参いただかなくても受診していただけますので、膵嚢胞を指摘されて不安を抱えている方、現在の治療方針でよいのか悩んでいるという方は、ぜひお気軽にお問合せください。

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聖路加国際病院 消化器病センター センター長 / 消化器内科部長 藤田 善幸(ふじた よしゆき)先生の写真

【コラム監修者】

藤田 善幸(ふじた よしゆき) 先生

社会医療法人達生堂 城西病院 院長 
元聖路加国際病院 消化器病センター センター長 / 消化器内科部長 

2004年に聖路加国際病院にて内科・外科・内視鏡部門を統合した消化器病センターを創設し、先進的なチーム医療体制を確立。消化管出血や急性胆管炎、急性腹症など緊急疾患にも24時間対応する高度な診療体制を構築してきた。2020年からは城西病院院長として、豊富な経験と指導力をもとに地域医療の中核を担っている。

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