
脳梗塞を経験したことのある方で、「再発したらどうしよう」という不安を感じている方は少なくありません。特に、脳梗塞は再発のリスクが高いといわれていることもあり、日々の生活で何に気をつけるべきか迷うことも多いのではないでしょうか。
そのような方も、脳梗塞について正しく理解することで、安心して生活していくための一歩が踏み出せるでしょう。
この記事では、脳梗塞の再発防止に役立つポイントについて分かりやすく解説していきます。脳梗塞の既往歴がある方やそのご家族の方は、ぜひこの記事を参考に日常生活でも再発防止策に取り組んでください。
目次
脳梗塞の再発リスク

脳梗塞は、脳の血管が血栓などによって詰まり、その先にある脳細胞へ十分な血液や酸素が届かなくなることで発症します。一度発症した時点で血管の状態が悪化していることが多く、もともと高血圧・糖尿病・脂質異常症・喫煙などの危険因子を抱えている人は、再発のリスクがさらに高くなります。そのため、発症後は自分が「再発しやすい状態にある」という自覚をもち、生活習慣の改善や治療の継続に努めることが重要です。
また、運動麻痺や言語障害などの症状が短時間で消失する「一過性脳虚血発作(TIA)」は、脳梗塞の前兆とされており軽視することはできません。一過性脳虚血発作は一見軽い症状に思えても、近い将来に本格的な脳梗塞を起こす危険性が高いため、決して見逃してはいけないサインでもあります。
脳梗塞の再発率
脳梗塞の再発率は、発症後10年間で49.7%という報告があります。これは、発症者の約半数が再び脳梗塞を起こす極めて深刻な数字です。再発を防ぐためには、なぜ再発するのかといった原因を深く理解し、日常生活から再発防止策を講じることが重要になります。
脳梗塞が再発するとどうなる?

脳梗塞が再発すると、一般的に初回よりも症状が重くなる傾向があります。
すでに初回発症で脳の一部がダメージを受けているため、ふたたび脳の血流が遮断されると、より広範囲に障害が広がったり回復が遅れたりすることがあります。特に、運動麻痺や言語障害などは改善しにくくなり、後遺症が残る可能性が高くなるため注意しましょう。
さらに、認知機能の低下が進んだり、注意力や記憶力が大きく損なわれたりすることもあり、嚥下機能(飲み込みの力)が弱くなることで誤嚥性肺炎のリスクも増加します。これらは高齢者に多くみられ、重症化しやすい点にも注意が必要です。
また、再発によって日常生活動作(食事・着替え・入浴・排泄など)に介助が必要となる場面も増え、生活の質が大きく低下する可能性があります。そして、重篤な場合には再発後に死亡に至ることもあるため、再発防止に努めることは非常に重要です。
脳梗塞の再発のサイン
脳梗塞の再発は突然起こるケースが多いため、前兆となるサインを見逃さず、迅速に対応することが必要とされます。
脳梗塞の再発のサインとしては、片側の手足のしびれや脱力、突然の麻痺、言葉がうまくでない、ろれつが回らないといった症状があります。また、片方の目が見えにくい、視界が二重に見える、急に視野が欠けるなどの視覚異常も警告サインです。さらに、歩けないほどの激しいめまいやバランスの喪失、突然の強い頭痛があらわれることもあります。
こういった症状がでたときは迷わず救急受診し、早期に治療を開始することが再発による症状を最小限に抑える鍵となります。
脳梗塞が再発する原因

脳梗塞が再発する原因としては、以下のようなものが挙げられます。
- 生活習慣の悪化
- 動脈硬化の進行
- 心疾患による血栓の再発
- 薬物療法の不十分な管理
- 栄養バランスの乱れや脱水
脳梗塞の再発防止には、これらの原因について詳しく理解することが重要です。
ここでは、それぞれの原因について詳しく解説していきます。
生活習慣の悪化
不規則な生活リズムや過食、過度の飲酒、運動不足などは、血圧・血糖値・脂質などの数値を悪化させ、脳梗塞の再発リスクを高めます。特に、喫煙は血管の機能を著しく低下させ、血栓が形成されやすい状態をつくりだします。喫煙者は非喫煙者に比べて脳血管障害の発症が多いことが知られおり、脳梗塞再発の大きな誘因にもなるため、禁煙は最優先の再発防止策であるといえます。
動脈硬化の進行
加齢や不健康な生活習慣によって動脈硬化が進むと、血管が硬くなって狭まります。これにより血流が滞りやすくなり、血栓が詰まりやすい状態を招きます。なかでも、高血圧や脂質異常症は動脈硬化を進行させる代表的な因子であり、適切な治療を怠ると再発の危険性がより高くなるため気をつけましょう。
心疾患による血栓の再発
心房細動などの不整脈は、心臓内で血栓ができる大きな原因となります。形成された血栓は、血流に乗って脳の血管に詰まることでふたたび脳梗塞を引き起こします。心疾患をもっている人は、経過を観察し、必要な治療を継続することが不可欠です。
薬物療法の不十分な管理
脳梗塞後は、抗血小板薬や抗凝固薬などによる再発防止が重要です。自己判断で薬を中断したり、飲み忘れが続いたりすると血栓形成のリスクが高まります。薬は症状がなくても継続することで効果を発揮するため、医師の指示を守って服薬管理していくことが必要です。
栄養バランスの乱れや脱水
塩分や脂質の過剰摂取、偏った食事、水分不足などは血液の粘度を高め、血栓ができやすい環境をつくります。特に、高齢者は脱水を起こしやすいため、夏場や体調不良時には注意が必要です。適切な栄養補給と十分な水分摂取が再発防止につながります。
脳梗塞が再発しやすい人の特徴

脳梗塞が再発しやすい人には、いくつか共通する危険因子があります。特に、以下のような人は再発リスクが高く、生活習慣の改善や治療の継続が求められます。
- 高血圧症・糖尿病・脂質異常症を抱えている人
- 喫煙や過度な飲酒を続けている人
- 心房細動などの不整脈がある人
- 肥満や運動不足の人
- 薬を医師の指示どおりに飲まない人
- ストレス過多で血圧変動が起こりやすい人
これらの要因は血管の負担を増やし、血栓ができやすい状態を招きます。上記の特徴に該当する人は、日常生活を見直して再発防止に積極的に取り組みましょう。家族や医療従事者と協力しながら、自分に合った対策を継続していくことが大切です。
脳梗塞の再発防止のための7つのポイント

脳梗塞の再発防止に重要なポイントは以下の7つです。
- 血圧を適切に管理する
- 医師の指示通りに薬を継続する
- バランスの良い食事や水分を摂る
- 禁煙と過度な飲酒は避ける
- 適度な運動を継続する
- 十分に睡眠をとる
- 歯周病を防ぐ
これらの再発防止策は、どれかひとつだけではなく、並行して取り組むことでより高い効果が得られます。継続していくことで血管の状態が改善され、再発リスクを下げられる可能性があります。
ここでは、それぞれの再発防止策について詳しくみていきましょう。
血圧を適切に管理する
脳梗塞再発の最大の危険因子である高血圧は、血管に強い負担を与え続けるため日頃からの管理が必須です。家庭用血圧計を活用して朝・晩に記録をつけ、医師と相談しながら目標値を維持することが大切です。
また、食塩摂取量を1日6g未満に抑える工夫も効果的です。味付けを薄めにしたり、加工食品を控えたりすることで高血圧の進行予防が期待できます。
医師の指示通りに薬を継続する
脳梗塞の再発防止には、抗血小板薬や抗凝固薬、高血圧や糖尿病の治療薬などを正しく服用することも重要です。症状が安定していても、薬を中断すると血栓がふたたびできやすくなるため、自己判断でやめずに継続しましょう。
飲み忘れ防止には、ピルケースを利用する、家族に声かけを頼むなどの工夫が役立ちます。服薬後に今までみられなかった体調不良があらわれたり、少しでも不安を感じたりする場合は医師に相談してください。
バランスの良い食事や水分を摂る
毎日3食、栄養バランスを意識した食事を摂ることが脳梗塞の再発防止には欠かせません。野菜や魚・海藻・果物などを意識的に取り入れ、脂質や塩分の摂りすぎを避けることが大切です。
また、水分不足は血液の粘度が上昇し、血栓ができやすくなる原因となります。こまめに水を飲む習慣をつけ、食事のメニューに汁物を加えるなどして脱水を防ぐよう心がけましょう。
禁煙と過度な飲酒は避ける
喫煙は、血管を傷つけて動脈硬化を進行させ、脳梗塞の再発リスクを上昇させます。そのため、禁煙はもっとも効果の高い再発防止策であるともいわれています。自分だけではどうしても禁煙できない場合は、禁煙外来の受診もひとつの手段になります。
また、飲酒は適量を守り、過度な飲酒による血圧上昇を避けることが重要です。特に、深酒や連日の多量飲酒は大きな負担となるため控えるようにしましょう。
適度な運動を継続する
運動は、血流改善や体重管理、血圧の安定化に効果があります。1日30分程度のウォーキングや軽いストレッチなど、無理のない範囲で継続することがポイントです。
運動は継続することに意味があるため、天候が悪い日には室内でできる体操に置き換えるなど、生活の一部として取り入れて柔軟に続けられる方法を選びましょう。
十分に睡眠をとる
睡眠不足は自律神経を乱し、血圧の変動やストレスの蓄積を招きます。毎日規則正しいリズムで睡眠をとり、質の良い休息を確保することが大切です。また、就寝前のスマートホンの利用を控える、リラックスできる時間を確保するなど、睡眠環境を整える工夫も有効です。
歯周病を防ぐ
歯周病は脳梗塞のリスクを高める要因のひとつとされています。研究では、歯周病がある人は脳梗塞の発症リスクが約2.8倍に上がるといわれています。
そのため、毎日の歯磨きやデンタルフロスの使用を習慣化し、口腔内を清潔に保つことが重要です。また、定期的に歯科検診を受け、歯周病の早期発見・早期治療を心がけることで脳梗塞再発のリスクを大きく減らせます。
脳梗塞の再発防止についてよくある質問

最後に、脳梗塞の再発防止についてよくある質問にお答えしていきます。
脳梗塞の再発に良くない食べ物は何ですか?
塩分の多い食品や揚げ物・加工肉・菓子類は高血圧や脂質異常を悪化させ、脳梗塞の再発リスクを高めます。再発防止のためにもこれらの食品は控えめにし、野菜・魚・果物などを中心に栄養バランスの良い食事を心がけることが大切です。
脳梗塞の再発防止のための手術はありますか?
脳梗塞の再発防止のための手術には、おもに以下の4つの方法があります。
- ステント留置術
狭くなった脳の血管を内側からカテーテルで広げて血流を改善する手術 - 頸動脈血栓内膜剥離術
開頭して脳の血管内にたまったプラーク(内膜)を取り除く手術 - 脳血管バイパス術
詰まりかけた血管の代わりに別の血管をつないで血流を確保する手術 - 卵円孔開存閉鎖術
先天的な異常で心臓に残った小さな穴(卵円孔開存)をカテーテルで閉鎖し、血栓が脳の血管へ飛ぶのを防ぐ手術
ただし、これらはすべての患者に適応となるわけではなく、病変の状態やリスクをもとに医師が総合的に判断します。
脳梗塞の再発防止の看護計画はどのような内容ですか?
脳梗塞を発症したあとの看護計画は、血圧管理や服薬指導、生活習慣の改善支援などを通じて再発防止を図ることを目標として作成されます。また、再発兆候の観察や早期受診につなげるための教育も重要な役割となります。さらに、患者の不安軽減や生活の質の向上に向けた心理的サポートなども看護計画の大切な要素です。
まとめ

今回の記事では、脳梗塞の再発防止のためのポイントについて詳しく解説してきました。
脳梗塞は一度発症すると再発のリスクが高く、再発時には後遺症や生活の質の低下だけではなく、命に関わる危険も大きくなります。再発防止のためには、生活習慣の乱れ・動脈硬化・心疾患・服薬の中断・栄養バランスの乱れなど、脳梗塞が再発する原因について正しく理解しておくことが大切です。そのうえで、血圧管理・薬の継続・食事と水分・禁煙と節酒・運動・睡眠・歯周病予防の7つのポイントを押さえた再発防止策を、無理のない範囲で継続していきましょう。
また、片側のしびれや麻痺、ろれつが回らない、急な視覚障害、激しい頭痛などのサインがあれば、迷わず早急に医療機関を受診してください。脳梗塞の再発防止のためにも、今日からできることをひとつずつ実践し、ご自身やご家族の健康を守ってください。
さらに治療方針に不安がある方や、ほかの医師の意見も聞きたいという方にはセカンドオピニオンの活用も有効です。専門医の客観的な意見を取り入れることで、より納得した治療選択が可能になるでしょう。
「会って話せる医療相談」では、豊富な経験と実績をもつ専門医が診察を担当しております。また、紹介状がない方でも受診可能で、必要に応じて診察当日にMRI・CTなどの画像検査を受けていただくことができます。脳梗塞の既往歴のある方には、生活習慣についても詳しくアドバイスをしておりますので、安心してお問い合わせください。

【コラム監修者】
高木 誠(たかぎ まこと) 先生
東京都済生会中央病院 名誉院長 / 脳神経内科部長
1979年慶應義塾大学医学部卒業。ニューヨーク州モンテフィオーレ・メディカル・センターでの留学を経て、2006年から2020年まで東京都済生会中央病院院長を務めた。専門は神経内科、とくに脳卒中診療に注力。脳血管内治療科や脳神経外科と連携し脳卒中センターを開設、SCUを整備するなど、「全身を診る」診療体制を確立してきた。