前立腺がんの症状とは?原因やなりやすい人の特徴についても解説

前立腺がんの症状とは?原因やなりやすい人の特徴についても解説

前立腺がんの症状とは?原因やなりやすい人の特徴についても解説

男性に多いがんのひとつとして知られるのが、前立腺がんです。

初期段階では自覚症状がほとんどなく、気づいたときには進行しているケースも少なくありません。そのため、正しい知識を持ち、早期発見につなげることが大切です。

本記事では、前立腺がんの代表的な症状や原因、さらには発症リスクが高い人の特徴までを解説します。ご自身や大切な方の健康を守るためにも参考になさってください。

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前立腺がんとは

前立腺がんとは 初期は自覚症状がほとんど出ないことがあり、前立腺肥大症などの排尿トラブルとまぎれやすいのが特徴です。まずは前立腺の場所と役割、前立腺がんの分類を確認していきます。

前立腺がんとは

前立腺の場所と役割

前立腺は、膀胱のすぐ下にある臓器です。前立腺の主な役割は、精液の一部となる前立腺液をつくり分泌することで、精子が動きやすく長く生き残りやすい環境を整えることです。射精の際には前立腺の筋肉が収縮して、この前立腺液を尿道へ押し出します。

また、前立腺は尿道を取り囲んでいるため、前立腺に変化が生じると、尿の勢いが弱まる、回数が増える、残尿感が続くなどの排尿症状が起こりやすくなります。

前立腺がんの分類

前立腺がんは、がんの広がりと進みやすさの二つの観点で整理します。

がんの広がりとしては、前立腺の中にとどまる段階から、前立腺の周囲の組織や精嚢、さらに骨盤内の近くのリンパ節に及ぶ段階、そして離れた骨などの臓器に及ぶ段階までが、病期(ステージ)I〜IVに分けられます。がんの進みやすさは、生検で得た組織の所見に基づき、グレードグループ1〜5で評価します。これら二つの情報を組み合わせ、治療の方向性を検討します。

前立腺がんの症状

前立腺がんの症状は、初期は目立たず、進むにつれて現れやすくなります。前立腺肥大症や前立腺炎と似た症状が多いため、続き方や組み合わせが手がかりになります。

前立腺がんの症状

前立腺がんの排尿症状

前立腺がんにみられる排尿の症状には、尿の勢いが弱い、出始めにもたつく、回数が増える、夜間に何度も起きる、出し切れない感じが続く、といったものがあります。尿に血が混じることが手がかりになる場合もありますが、頻度は高くありません。なお、これらの症状は前立腺肥大症でも起こるため、前立腺がんかどうかは検査で確認することが必要になります。

前立腺がんの進行時の症状

進行した前立腺がんでは、腰や骨の鈍い痛みが長く続く、足のむくみが出る、だるさや体重減少が目立つ、といった全身の症状が加わることがあります。痛み止めで一時的に和らいでも、症状が続く際には前立腺がんの可能性も考えて受診するとよいでしょう。

前立腺がんと前立腺炎や前立腺肥大症との違い

前立腺がんと他の病気では、症状の出方が異なることがあります。前立腺炎は、発熱や悪寒、排尿時の強い痛み、会陰部(肛門と陰嚢の間)の痛みなど、急に強い症状が出るのが特徴です。なお前立腺肥大症は、痛みや発熱を伴わず、排尿症状がゆっくり進みやすいのが特徴です。一方、前立腺がんは前立腺の外側寄りにできることが多く、初期は尿道を強く圧迫しないため症状が目立たないまま進むことがあります。持続する排尿症状、原因のはっきりしない血尿、説明のつかない骨の痛みなどは受診のきっかけになります。症状だけでは最終判断ができないため、前立腺がんが心配な場合は、検査で確認することが大切です。

前立腺がんの原因

前立腺がんは、ひとつの出来事で突然起こるというより、長い時間の中で細胞の性質が少しずつ変わっていくことが背景にあると考えられています。年齢と男性ホルモンの影響を土台に、細胞内で起こる変化が積み重なり、前立腺がんの背景に関与します。初期は症状が目立ちにくいため、この起こり方を押さえておくことが大切です。

前立腺がんの原因

男性ホルモンと加齢

前立腺は男性ホルモンの刺激を受けます。その際、細胞は増えたり修復されたりを繰り返すため、そのたびにごく小さな遺伝子の変化が起こります。若い時期は修復がうまく働きますが、加齢とともに調整が弱まり、こうした変化が蓄積しやすくなります。結果として、前立腺がんの発生に関わる背景が形成されやすくなります。

遺伝子変化と修復のゆらぎ

細胞の遺伝子は日々の代謝や外的刺激で小さな傷を受けます。通常は修復機構が働きますが、その働きにゆらぎが生じると、変化が残りやすくなります。前立腺がんでは、このような遺伝子レベルの変化が積み重なることが、発生の背景にあると考えられています。

慢性炎症と酸化ストレス

前立腺の中で軽い炎症が長く続くと、細胞は修復を繰り返します。この過程で遺伝子の変化が重なりやすくなり、酸化ストレスと呼ばれる細胞への負担も加わることで、前立腺がんの土台に関与する可能性があります。自覚症状がはっきりしない段階でも、内側ではこうした変化が静かに進むことがあります。

前立腺がんになりやすい人の特徴

前立腺がんは初期の症状が乏しいことがあるため、当てはまる背景がある人ほど、確認のタイミングを早めに考えることが有用です。ここでは、該当しやすい条件を整理します。

前立腺がんになりやすい人の特徴

前立腺がんと年齢・家族歴

前立腺がんは年齢とともに増えます。父や兄弟など近い血縁に前立腺がんの人がいる場合は、いない人に比べて見つかる確率が高まる可能性があります。家族歴がある人は、症状の有無にかかわらず、検査の時期を早めに検討すると安心です。

前立腺がんと遺伝子

若い年齢での前立腺がんや、家系内で前立腺がんや乳がんなどが重なる場合は、遺伝的な素因が関わることがあります。こうした背景がある人は、専門外来での相談や検査計画について早めに実施する価値があります。

前立腺がんと生活習慣

肥満、運動不足、喫煙、脂質の多い食事に偏る生活は、ホルモンや炎症のバランスに影響し、前立腺がんとの関連が指摘されています。個人差はありますが、体重管理、禁煙、適度な運動、野菜や魚を含む食事は、前立腺がん以外の病気予防にも役立つ可能性があります。

前立腺がんとの関連が指摘されている病気

メタボリックシンドローム、脂質異常症、糖尿病などは、前立腺がんとの関連が報告されています。直接の原因と断定はできませんが、これらの持病がある場合は、症状が乏しくても前立腺がんの検査について早めに検討しておくとよいでしょう。

前立腺がんのセルフチェックと検査

前立腺がんは症状だけでは見分けにくい病気です。セルフチェックは受診や検査を考えるための目安にとどめ、気になる変化が続くときは自己判断を避けて、検査で確認することが勧められます。

前立腺がんのセルフチェックと検査

前立腺がんのセルフチェック

次のような背景や変化が重なると、前立腺がんの確認を早めに考える目安になります。

  • 50歳以上である
  • 父や兄弟など近い血縁に前立腺がんの人がいる
  • 尿の勢いが弱い、出始めにもたつく、夜間に何度も起きる、出し切れない感じが続くなどの排尿症状が数週間以上続く
  • 原因のはっきりしない血尿や骨の鈍い痛みが続く
  • 以前の検査で前立腺の指標「PSA」について指摘を受けている。

これらは、前立腺がんではなく前立腺肥大症や前立腺炎でも起こり得るため、症状の有無や強さだけで判断せず、検査で確認することが大切です。

前立腺がんの検査

前立腺がんの検査は段階的におこないます。

まず、問診と診察で症状や経過を確認し、肛門から指で前立腺を触れて硬さや凹凸を確かめる直腸診をおこなうことがあります。また採血では、前立腺から血中に出るたんぱく質であるPSAを測定します。しかし、PSAは前立腺がんでも大きく上がらないことがあるため、数値だけでは判断せずに経時的な変化や他の情報と合わせて評価をします。

画像検査は、超音波やMRIなどを用い前立腺の中の疑わしい部分を絞り込みます。前立腺がんの確定診断は針生検でおこない、採取した組織を顕微鏡で調べます。病気の広がりをみる目的で、必要に応じてCTや骨の検査などを追加します。

前立腺がんの治療法

前立腺がんの治療は、病気の広がりや性質、年齢や持病、そして本人の希望を踏まえて選びます。治療の柱は手術・放射線治療・薬物療法の三つで、状況に応じて組み合わせることもあります。なお、前立腺がんの根治には、主に手術か放射線治療が必要になります。
手術では一時的な尿失禁や男性機能の低下が課題となる一方で、東大病院の放射線治療は 5回通院で完了し、保険適用で費用負担も軽いという特徴があります。

前立腺がんの治療法

前立腺がんの手術

前立腺内にとどまっていて周囲への広がりが限られているがんの場合は、おもに手術が選択されます。前立腺がんの手術は、前立腺と精嚢を摘出する前立腺全摘除術が標準的です。開腹手術のほか、腹腔鏡手術やロボット支援手術でおこなわれることもあります。

手術の後は、尿の勢いや回数などの排尿症状が一時的に変化しやすく、尿失禁や勃起機能の低下がみられることがあります。回復とともに改善していくケースも多々ありますが、回復には個人差があります。また、手術後に血液検査のPSAが上昇してきた場合は、放射線治療や薬物療法を追加することがあります。

前立腺がんの放射線治療

手術同様に、前立腺がんの根治をめざす治療として広く用いられます。病気の広がりやリスクによっては、一定時間ホルモン療法という薬物治療を併用する場合があります。

前立腺がんの放射線治療には、身体の外から放射線を当てる方法と、前立腺内に器具(線源)を入れて放射線を照射する方法があります。いずれも通院で進められることが多く、治療中は頻尿や排尿時の違和感、肛門まわりの不快感などの症状が出る場合があります。こうした症状の回復は時間とともに軽くなるケースもあれば、長く続くこともあります。

外照射(外部放射線治療)

外照射は体外から放射線を照射し、がん細胞をピンポイントで攻撃する方法です。治療の大きな特徴としては、放射線が腫瘍に直接届くため、がん細胞を効果的に破壊できることが挙げられます。また、周囲の正常な組織への影響を最小限に抑えながら治療が進められる点も大きな利点です。
この精度の高い照射を実現するために、画像誘導放射線治療(IGRT)や強度変調放射線治療(IMRT)が駆使されています。
IGRTは、治療中にリアルタイムで画像を確認しながら放射線を照射するため、がんの位置をより正確に把握することができます。これにより放射線を的確に照射し、治療効果を高めるとともに副作用を最小限に抑えることができるのです。

一方、IMRTは放射線の強さや方向を細かく調整する技術です。この治療法により、腫瘍に最も効果的に放射線を照射できるかつ正常な組織への影響を避けることができるのです。また、がんのサイズや形に合わせて最適な放射線量を照射することもできます。

なお、治療の期間としては1回数十分の照射を週に5回、数週間にわたって行います。通院しながら治療が受けられるため、日常生活に大きな支障をきたすことはありません。多忙な方や日常生活を維持しながら治療を希望される方にも最適な方法といえるでしょう。

小線源治療(ブラキセラピー)

小線源治療(ブラキセラピー)は放射線源を直接前立腺内に挿入して、がんを内部から治療する方法で、局所的に広がった前立腺がんに特に有効です。米粒ほどの小さな放射線源を前立腺内に挿入し、がんに直接照射することで非常に精密かつ効果的な治療が可能になります。 この治療の最大の魅力は、短期間で治療が完了し、入院の必要がないことです。治療後はそのまま日常生活に戻れるため、仕事や生活のリズムに大きな影響を与えることはありません。また、治療が進む中で体調への負担が少なく、精神的にも安心して治療を受けることができます。

なお治療法には、低線量率(LDR)高線量率(HDR)の2種類があります。低線量率は、放射線源が長期間前立腺内に留まり、継続的に放射線を放出する方法です。一方、高線量率では、短時間で高精度な放射線を照射し、その後すぐに放射線源を取り出します。どちらの方法も、がんに対して効果的に治療を行えるため、患者様の状態に応じて最適な方法を選ぶことができます。

高線量率(HDR)のブラキセラピーは、外照射と組み合わせて行うこともあり、がんが前立腺内にとどまっている場合に特に効果的です。非常に高精度な放射線を照射できるため、周囲の正常な組織に与える影響を最小限に抑えることも魅力です。体調が不安定な方や高齢者にも負担が少なく、安心して受けられる治療法なのです。

前立腺がんの薬物療法

病状が進行した場合や、他の治療と組み合わせて薬物療法をおこないます。

前立腺がんの薬物療法としては、男性ホルモンの働きを下げて前立腺がんの勢いを抑えるホルモン療法が基本になります。この治療では、注射薬や内服薬を用いて前立腺がんの進行に関わる刺激を弱めます。効果の継続期間には個人差があり、のぼせ、疲れやすさ、筋力低下、骨が弱くなりやすい(骨密度の低下)といった副作用が起こり得ます。

さらに病状が進んだ場合や効果が弱くなってきた場合は、新しいタイプのホルモン薬や抗がん薬を組み合わせます。骨への広がりがあるときは、骨を守る薬や痛みを和らげる治療を加えることがあります。薬物療法は症状のコントロールにもつながるため、生活の質を保ちながら前立腺がんと付き合ううえで重要な柱になります。

前立腺がんが心配な方へ

前立腺がんは、症状だけでは前立腺肥大症や前立腺炎と区別しにくい病気です。迷ったときにどう動けばよいかを、受診の目安と検査の考え方に分けて整理します。

前立腺がんが心配な方へ

前立腺がんが疑われる症状・背景がある場合の対応

尿の勢いが弱い、尿の出始めにもたつく、尿の回数が増える、出し切れない感じが続く、といった排尿の症状が数週間以上続くときは、自己判断せずに受診を検討してください。同様に血尿が出た、原因のはっきりしない腰や骨の痛みが続く、といった変化が感じられる場合も受診をおすすめします。

また、家族に前立腺がんの人がいる、以前に検査で前立腺の数値(PSA など)について指摘を受けた、といった背景がある場合は、症状が乏しくても早めに泌尿器科へ相談すると安心です。特に、急な発熱や強い会陰部(肛門と陰嚢の間)の痛みを伴う場合は前立腺炎の可能性があるため、早めに受診してください。その際、症状が始まった時期、症状の頻度・尿の回数、血尿の有無、服用中の薬(特に血液をサラサラにする薬)などを伝えると、検査や診断がスムーズです。

前立腺がん検診(PSA)に関する考え方

PSAは、前立腺がんの早期発見に役立つ一方、前立腺肥大症や炎症でも上がることがあります。また、PSAは、市区町村が一律に実施する対策型のがん検診には含まれていません。一方、人間ドックでは多くの施設でPSAが基本コースに含まれるか、申込時にオプションとして選べる運用が一般的です。

PSA検査を受けるかどうかは、年齢や家族歴といった背景、PSA検査の利点・不利益の説明を踏まえて選択するのが基本です。会社の健診では法定項目には入らないことが多く、任意で追加するか、人間ドックで選ぶ形となりますので、結果の解釈や次の対応(再検査・画像・生検など)は、かかりつけ医や泌尿器科で確認すると安心です。

まとめ

前立腺がんは、初期は症状が目立たない一方で、進むにつれて排尿の症状や血尿などが手がかりになります。症状だけでは前立腺肥大症や前立腺炎と区別が難しいため、セルフチェックを目安に、PSA検査や診察、画像検査、生検などの検査で確認することが大切です。

なお治療は、病気の広がりや性質、年齢や持病、希望を踏まえて、手術、放射線治療、薬物療法を組み合わせて選ぶ形になりますので、迷ったら早めに泌尿器科に相談するとよいでしょう。

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東京大学医学部附属病院 総合放射線腫瘍学講座 特任教授の中川 恵一(なかがわ けいいち) 先生の写真

【コラム監修者】

中川 恵一(なかがわ けいいち) 先生

東京大学医学部附属病院 総合放射線腫瘍学講座 特任教授

放射線治療のスペシャリストとして、長年にわたりがん医療の最前線で活躍。治癒が難しい患者のケアにも力を注ぎ、緩和ケアの推進に長年取り組んできた。その功績は国内外で高く評価され、放射線治療分野における第一人者として知られている。なお現在は、東京大学病院がん放射線治療・緩和ケア部長として、がん医療の発展と社会全体への啓発活動の双方に尽力している。

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