脳動静脈奇形の症状とは?原因や治療法についても解説

脳動静脈奇形の症状とは?原因や治療法についても解説

脳動静脈奇形の症状とは?原因や治療法についても解説

脳動静脈奇形(のうどうじょうみゃくきけい)は先天性の脳血管異常で、脳出血やくも膜下出血、てんかん発作などを引き起こす原因のひとつであることが知られています。しかし、長期間にわたって無症状であることも多いため、脳動静脈奇形が生じていることを知らないまま成人し、健康診断や脳ドックで偶然見つかるケースも少なくありません。

脳動静脈奇形が指摘された場合は、将来的な脳出血やくも膜下出血などの発症リスクを回避するために、正しい診断と適切な治療を受けることが重要です。

この記事では、脳動静脈奇形の症状や原因、治療法について詳しく解説していきます。

脳動静脈奇形の名医へのご相談はこちらから

脳動静脈奇形とは

脳動静脈奇形とは

脳動静脈奇形(AVM=Arteriovenous Malformation)とは、脳内の動脈と静脈が毛細血管を介さずに直接つながってしまう先天性の血管異常ですが、最近では後天的に発生することも知られています。

本来、心臓から送り出された血液は、動脈から毛細血管を通って静脈へと戻っていきます。しかし、脳動静脈奇形では動脈血がそのまま静脈へと流れ込み、異常な血管の塊(ナイダス)が形成されてしまいます。このナイダスには、正常な毛細血管よりも血管壁が非常に薄いという特徴があります。そのため、流れの速い動脈血が毛細血管を介さずに流入することでナイダスや静脈に大きな負担がかかり、脳出血やくも膜下出血を引き起こす原因となるのです。また、出血が起こらないケースでは、てんかん発作や頭痛がみられることがあります。

脳動静脈奇形による出血の好発年齢は20代~40代とされており、若い年代で脳出血・くも膜下出血を発症した患者さんについては、脳動静脈奇形の有無を検査で調べることが推奨されています。

脳動静脈奇形のおもな原因

脳動静脈奇形のおもな原因

脳動静脈奇形は、胎児期の血管形成異常による先天性の疾患だと考えられていますが、後天的に発生することも知られています。

脳の血管は胎児期に複雑な発達を経て形成されますが、その過程で何らかの異常が起こると正常な毛細血管が形成されず、異常な血管の塊(ナイダス)が生じる原因となります。また、家族内での発症はほぼみられないため、一部を除き遺伝性ではないとされています。

脳動静脈奇形の発症率は年間10万人に1人程度とまれではありますが、女性よりも男性に多く、くも膜下出血の原因のおおよそ10%を占めるとされています。

脳動静脈奇形の症状

脳動静脈奇形の症状

脳動静脈奇形の症状には個人差があります。出血が引き起こされることによって急に症状が出ることもあれば、無症状のまま経過することもあります。

ここでは、脳動静脈奇形の症状について解説していきます。

脳出血・くも膜下出血

脳動静脈奇形が見つかるきっかけとなった症状の約50%は、脳出血・くも膜下出血によるものです。小さい脳動静脈奇形のほうが出血しやすい傾向があり、脳動脈瘤の破裂よりも症状は軽いとされています。

出血がおこると、突然の激しい頭痛、吐き気・嘔吐、意識障害、手足の麻痺、言語障害などがあらわれます。なかでも、「今まで経験したことのない激しい頭痛」が突然起こった場合は、緊急性が高いと考えられます。出血量や出血部位によっては命に関わることもあるため、速やかな受診が必要です。

てんかん

脳動静脈奇形の約20%~30%にみられるのが、てんかんの症状です。てんかんは、脳出血・くも膜下出血とは反対に、大きな脳動静脈奇形に多くみられます。

はじめに体の一部にけいれんが起こり、だんだんと範囲が広がっていく「ジャクソン型けいれん」が多くを占めますが、突然倒れて全身がけいれんしたり硬直したりする大発作が起こることもあります。そのため、過去にてんかんの治療を受けたことのある方や現在治療中の方は、脳の精密検査を受けることが推奨されています。

その他

若年層の脳動静脈奇形では、血液が毛細血管を通ることができなくても周囲の正常な血管が機能するため、脳への血流が大きく損なわれることはありません。しかし、加齢にともない動脈硬化が進むと、脳が血流不足になりやすい状態となり、頭痛・手足の麻痺・認知機能の低下などが引き起こされることがあります。

脳動静脈奇形の診断に用いられる検査

脳動静脈奇形の診断に用いられる検査

脳動静脈奇形には、出血やてんかんの発症をきっかけに見つかるケースと、無症状の病変が健康診断や人間ドックで明らかになるケースの2つがあります。いずれのケースであっても、脳動静脈奇形であるかどうかを正しく診断するためには、いくつかの検査が必要となります。

ここからは、脳動静脈奇形を診断するために用いられる検査についてみていきます。

CT検査

脳内での出血が疑われる症状のある患者さんや、けいれんの発作で来院した患者さんには、造影剤を使用しないCT検査(頭部単純CT)をおこなうことが一般的です。脳動静脈奇形があると白く淡い影として映りますが、出血の信号によって脳動脈奇形の淡い影が遮られ、はっきりとは確認できないことがあります。

一方、造影剤を使用したCT検査では、異常な血管の塊(ナイダス)や拡張してしまった静脈をしっかりと観察することができます。また、CTA(CT血管撮影)により、動脈の血管情報だけを集約して画像化することも可能です。

MRI検査

脳動静脈奇形におけるMRI検査では、脳と病変部位の位置関係がより詳しく把握することができ、CT検査ではわかりづらい古い出血についても痕跡を発見できる可能性があります。

加えて、MRA(Magnetic Resonance Angiography=磁気共鳴血管撮影)により、血管だけの情報を画像化することもできます。

また、造影剤を使用することなく脳動静脈奇形の状態をはっきりと観察できることも、MRIをおこなうことのメリットのひとつです。

脳血管造影検査

ごく小さな脳動静脈奇形は、造影CTやMRIをおこなっても病変を発見できないことがあります。しかし、脳動静脈奇形の可能性が排除できないという場合は、脳血管造影検査をおこないます。

太もものつけ根の動脈から挿入したカテーテルを脳動脈の近くまで誘導し、造影剤を注入します。動脈から静脈へと流れる造影剤を観察することで脳血管の状態や血液の流れ方を確認することができるため、ナイダスの有無だけではなく、より正確な脳血管の情報を得ることができます。そのため、治療方針を決定するためにも不可欠な検査とされています。

脳動静脈奇形の治療方針

脳動静脈奇形の治療方針

脳動静脈奇形の治療方針は、病変の大きさや発症部位、症状・破裂(出血)の有無、患者さんの年齢や全身状態などを総合的に評価して検討されます。

ここでは、脳動静脈奇形の治療の考え方について解説していきます。

破裂がみられる場合

脳動静脈奇形の破裂により脳出血やくも膜下出血を起こしている場合は、積極的治療が検討されることが一般的です。

一度破裂した脳動静脈奇形は、未破裂の病変と比べて再出血のリスクが高く、再度出血すると神経障害の悪化や生命予後への影響が懸念されます。そのため、全身状態や出血後の回復状況をみながら、早期の治療開始を検討するケースが多い傾向にあります。ただし、出血直後は脳浮腫や血腫の影響で病変評価が難しい場合もあり、そのようなケースでは症状が落ち着いてから治療計画を立てることになります。

治療法は、病変部位や出血状況に応じて開頭手術・血管内治療・定位放射線治療などから適切な方法が選択されます。また、摘出が困難な大型の脳動静脈奇形でも選択的血管造影で出血点を調べ、出血源のみを塞栓することで再出血が予防できます。

未破裂の場合

症状があらわれていない脳動静脈奇形では、病変の大きさや血管構造、過去の画像所見などから将来的な出血リスクを評価しますが、治療の選択には慎重な判断が求められます。

たとえば、病変が脳深部や運動野、言語野などの重要機能に近い場合は、治療による神経障害リスクが高くなる可能性があります。そのため、出血リスクよりも治療リスクが上回ると判断されるケースでは、すぐに治療をおこなわずに経過観察が選択されます。

ただし、若年の患者さんは長期間にわたって出血リスクを抱えることになるため、病変が脳機能をつかさどる重要な部位ではなくサイズが比較的小さい場合は、積極的な治療が推奨されています。

脳動静脈奇形の治療法

脳動静脈奇形の治療法

ここからは、現在おこなわれている脳動静脈奇形の治療法について説明していきます。

開頭手術による動静脈奇形摘出術

脳動静脈奇形を開頭手術によって直接取り除く方法です。

頭蓋骨を開き、手術顕微鏡下でナイダス(異常な血管の塊)と正常な血管のあいだを金属製のクリップなどで止血し、脳動静脈奇形を摘出すします。病変を完全に摘出できれば再発や再出血のリスクを大きく減らせるため、根治が期待できる治療法とされています。

開頭手術は、病変が比較的脳表に近く、摘出しやすい部位にあるケースで適応となります。一方で、脳深部や運動・言語など重要な機能をつかさどる領域に病変がある場合は、手術による神経障害リスクが高くなるため慎重な判断が必要です。

開頭手術による動静脈奇形摘出術のリスクとしては、以下のようなものが挙げられます。

  • 出血
  • 感染
  • 神経障害
  • 麻痺
  • 言語障害
  • 高次脳機能障害

頭蓋骨を開いておこなう治療であるため身体的な負担も大きく、術後は一定期間の入院管理やリハビリが必要となります。

血管内治療による塞栓術

カテーテルを用いて血管の内側から異常血管を閉塞する治療法です。

太もものつけ根や手首などから細いカテーテルを挿入して脳動静脈奇形への流入血管まで誘導し、プラチナ製の細いコイルや液体の塞栓物質を注入して脳動静脈奇形を閉塞させます。以前は塞栓術だけで根治できるケースは少なかったですが、カテーテル治療の進歩とともにカテーテル治療のみで根治できる症例が増えてきています。カテーテル治療を併用することで、開頭手術や定位放射線治療と組み合わせて根治に持ち込める頻度が高まります。また、病変の血管構造によっては塞栓術が適応とならないことがあります。

血管内治療による塞栓術は、開頭手術に比べて身体への負担が比較的小さい点がメリットですが、血管内で操作をおこなうため以下のようなリスクが考えられます。

  • 脳梗塞
  • 血管損傷
  • 出血
  • 塞栓物質による正常血管への影響

なお、カテーテルを用いた治療は進歩を続けており、現在では塞栓術単独で根治に至った症例も数多く報告されています。

定位放射線治療(ガンマナイフ・ノバリスなど)

脳動静脈奇形の病変に対して、高い線量の放射線を集中照射して閉塞させる治療法です。

定位放射線治療のメリットのひとつは、非常に小さな範囲に高精度で放射線を照射できることです。正常な脳の組織への影響を抑えることができるため、脳深部や重要な機能をつかさどる領域など、開頭手術のリスクが高い病変に対しても適応となることが多い治療法でもあります。

ただし、治療後すぐに異常な血管が閉塞するわけではなく、完全に閉塞するまでには2〜3年程度かかることがあります。その間は出血のリスクが残るため、定期的な画像検査による経過観察が必要です。また、治療の対象となる脳動静脈奇形は、病変のサイズ(直径)が3cm以下に限られます。

定位放射線治療のおもなリスクは以下のとおりです。

  • 治療後も一定期間残る出血リスク
  • 放射線性浮腫
  • 放射線による脳障害(1.4%程度)

非侵襲的で身体負担が少ない治療法ですが、即効性には期待ができないため、治療後の慎重な経過観察が求められます。

経過観察

未破裂で症状がなく、病変の部位や大きさから治療リスクが高いと判断されるケースには、定期的な画像検査による経過観察が選択されることがあります。

経過観察中は定期的にCTやMRIをおこない、必要に応じて脳血管造影検査を実施してナイダスや脳血管の変化、出血の兆候などを確認します。

ただし、経過観察は「何もしない」という意味ではありません。将来的な出血リスクや年齢変化などに応じて治療方針が見直される場合もあるため、継続的に通院することが重要です。また、頭痛やけいれん、神経症状など新たな症状があらわれた場合は、早めに主治医へ相談する必要があります。

近年の脳動静脈奇形の治療の傾向

近年の脳動静脈奇形の治療の傾向

脳動静脈奇形の発症率は10万人に1人とまれな疾患ではありますが、脳出血やくも膜下出血などが発症すると、後遺症が残る可能性がある病気です。

病変は異常な血管の塊でできているため、開頭手術での摘出は大出血のリスクをともない、治療が非常に困難であるとされています。しかし、近年のカテーテル治療(血管内治療)の進歩はめざましく、開頭手術前の病変縮小を目的とした補助的治療として用いられるだけではなく、カテーテル治療のみでも根治可能な時代に入っています。

大型の脳静脈奇形や脳深部(基底核・脳幹)の病変では、開頭手術のみで根治を目指すことは極めて難しいという現実があります。大型のものでは、流入動脈をできるだけ塞栓して脳動静脈奇形を縮小し、その後に摘出あるいはガンマナイフによる治療をおこなうのが一般的になっています。

また、脳深部の病変に対するカテーテル治療では、流入動脈側からのアプローチによる塞栓だけではなく、流出静脈側からのアプローチも組み合わせることにより根治できるようになってきています。大型、脳深部の脳動静脈奇形は、治療ができないと放置されている患者さんも多くみられますが、近年ではカテーテル治療による治療が可能なケースも増えてきています。

なお、本記事の監修者である寺田医師は、脳動静脈奇形の塞栓術を約200件経験しており、近年では年間20件程度の治療をおこなっております。本疾患で、特に大型・深部のものは、治療不可能と放置されている患者さんが多いですが、最近ではカテーテル治療により治療可能となってきています。

実際の症例

硬膜動静脈シャントもまれな疾患であり、出血、脳梗塞(静脈性)、眼球突出、複視、結膜充血、耳鳴りなどで発症することが多く、脊髄にできた場合は、排尿排便障害、両下肢から四肢の麻痺やしびれにより発症します。

本疾患の大部分はカテーテル治療で根治可能であり、早期に治療介入すれば良好な予後が担保される疾患です。ただ、本疾患も脳動静脈奇形と同様、まれな疾患のため、多数例の治療経験のある医師が極めて少ないのが現状です。

本疾患のカテーテル治療も難易度は高いですが、脳動静脈奇形に比べて治療のリスクはさほど高くはありません。確実に診断し、適切に治療すれば、ほとんど後遺症なく根治できます。

なお、本疾患の詳細について知りたい方は、”dAVF・AVM(硬膜動静脈瘻、脳動静脈奇形)のすべて”寺田友昭、清末一路、Rene Chapot編をご参照ください。

実際の症例 14歳 男児。
症例 71歳 男性。

脳動静脈奇形についてよくある質問

脳動静脈奇形についてよくある質問

最後に、脳動静脈奇形やその症状についてよくある質問にお答えしていきます。

脳動静脈奇形にはどのような後遺症がありますか?

出血(破裂)を起こした場合は、後遺症が残る可能性があります。出血した量や範囲などにより異なりますが、麻痺・言語障害・高次脳機能障害・てんかんなどがみられることがあります。

脳動静脈奇形は子供だけに症状がみられる病気ですか?

脳動静脈奇形は先天性の病気ですが、症状があらわれる時期はさまざまです。乳児期や小児期に脳出血やてんかん発作などの症状がみられることもあれば、成人になるまで無症状のまま経過することもあります。

脳動静脈奇形は難病指定されていますか?

大人の脳動静脈奇形は難病指定の対象外ですが、小児の難病(小児慢性特定疾患)に指定されています。ただし、脳出血後にけいれん発作や麻痺などの後遺症が残った場合は、等級に合わせて身体障害者手帳を申請することができます。

まとめ

脳動静脈奇形は脳出血やくも膜下出血、てんかんなどの重篤な症状を引き起こす恐れがあります。

脳動静脈奇形は先天性の血管異常で、脳内の動脈と静脈が毛細血管を介さずに直接つながり、ナイダス(異常な血管の塊)が形成される病気です。

無症状のまま経過するケースもありますが、脳出血やくも膜下出血、てんかんなどの重篤な症状を引き起こし、後遺症が残る恐れがあります。そのため、病変の破裂(出血)と思われる症状があらわれたり、人間ドックなどで脳動静脈奇形の疑いがあると指摘されたりした場合は、正しい診断を受けて適切な治療をおこなうことが重要です。

脳動静脈奇形の治療法には、開頭手術・血管内治療による塞栓術・定位放射線治療があり、病変の状態や破裂(出血)の有無、患者さんの年齢や全身状態を総合的に判断して選択されます。特に、近年ではカテーテル治療による血管内治療の進歩により、これまで治療が困難であった大型の脳動静脈奇形や脳深部の病変についても根治したケースが報告されています。

「会って話せる医療相談」では、脳動静脈奇形のカテーテルによる血管内治療に数多くの臨床経験をもつ医師が診察をおこなっております。現在のご病状に不安を抱えている方や、治療方針についてあらためてご相談になりたいという方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

脳動静脈奇形の名医へのご相談はこちらから

昭和医科大学横浜市北部病院 脳神経外科 特任教授 、第20回日本血管内治療学会総会 会長 寺田 友昭(てらだ ともあき)先生の写真

【コラム監修者】

寺田 友昭(てらだ ともあき) 先生

昭和医科大学横浜市北部病院 脳神経外科 特任教授 
第20回日本血管内治療学会総会 会長

日本脳神経血管内治療学会の指導医・理事、日本血管内治療学会理事、脳卒中の外科学会運営委員・指導医を歴任する脳神経血管内治療医である。LINNCやALICEなど国際学会でも要職を務め、国内外で高く評価。フローダイバーターステント治療の名医として、関東圏のみならず全国から治療困難例の手術を行なっている。

コラム一覧に戻る